はじめに:円安は「結果」であり、「構造」の反映である
2022年以降、日本円は急激な円安に見舞われた。
その原因としてよく挙げられるのは「日米金利差」「貿易赤字」「エネルギー高騰」などだが、これらはあくまで表層的な要因にすぎない。
本稿では、円安の根本原因を「制度設計」と「組織論」の視点から読み解く。
キーワードは――財務省の“統制型財政”と自己保存戦略である。
第1章:財務省が築いた“デフレ構造”の30年
1990年代以降、日本は長期デフレに陥った。
財務省は「財政健全化」を旗印に、歳出抑制・増税路線を推進。
プライマリーバランス黒字化を至上命題とし、景気より財政規律を優先してきた。
この結果、国内需要は抑制され、企業の投資意欲も減退。
経済成長率は低迷し、金利は上がらず、円は売られやすい通貨となった。
第2章:インフレと賃金上昇がもたらす“組織的矛盾”
2024年以降、日本にもインフレ傾向と賃金上昇の兆しが見え始めた。
しかし、財務省はこれを歓迎するどころか、増税路線を強化している。
・消費税増税の議論
・所得控除の縮小
・社会保険料の引き上げ
これらの施策は、インフレによる好景気を抑え込む方向に働く。
なぜか?
それは、インフレ・好景気が財務省の存在意義を揺るがすからである。
第3章:自己保存戦略としての“増税路線”
財務省は、統制型財政モデルの中で権限を維持してきた。
もし減税によって好景気が実現すれば、
「財政規律こそが国を守る」という前提が崩れ、
財務省の統制力は弱まる。
そのため、財務省はインフレを“抑え込むべきもの”として扱い、
増税という手段で自己保存戦略を遂行しているように見える。
第4章:日銀と市場の役割は“補助線”にすぎない
日銀は長らくゼロ金利政策を維持し、金利差による円安を招いた。
市場は貿易赤字・資本流出に反応し、円売りを加速させた。
しかし、これらはあくまで財務省が設計した構造の中での反応である。
根本的な円安の原因は、金利が上がらない構造=デフレ設計にある。
第5章:投資家としての“納得感ある選択肢”とは
円安は一時的な現象ではなく、制度設計の帰結である。
だからこそ、投資家は以下のような選択肢を検討すべきだ。
・外貨建て資産(GLDM・FANG+・米国ETFなど)への分散
・インフレ耐性のある資産(コモディティ・不動産)へのシフト
・制度活用(NISA・iDeCo)による税制最適化
そして何より、制度の裏にある“設計思想”を読み解く力が求められる。
おわりに:円安の“犯人”は誰か?
円安の直接的な原因は金利差かもしれない。
だが、なぜ日本の金利は上がらないのか?
その問いの先にあるのが、財務省の統制型財政と自己保存戦略である。
円安は「市場の反応」ではなく、「制度の反映」。
その構造を理解することが、納得感ある投資判断への第一歩となる。
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