① 現状:少子化は“制度の思想疲弊”から起きている
2024年、日本の出生数はついに70万人を割り込み、合計特殊出生率は1.15と過去最低水準へ。
政府は「異次元の少子化対策」を掲げ、子ども家庭庁を新設し、子育て支援金制度(通称:独身税)の導入を予定している。
しかし、制度の設計思想がズレていることで、少子化はむしろ加速しかねない構造になっている。
② 子ども・子育て支援金制度=“独身税”と呼ばれる理由
2026年から導入される支援金制度は、医療保険料に上乗せする形で徴収される。
給付対象は子育て世帯のみ、負担は全世代から徴収──この構造が「独身税」と揶揄される原因だ。
- 独身者・子育て終了世帯にも負担が発生
- 給付の恩恵がない層にとっては“納得感なき徴収”
- 制度の焦点が育児支援に偏っており、“出生数の押し上げ”には直結していない
この偏りが、未婚・子なし層の共感を得られない最大の要因となっている 。
③ 子ども家庭庁の予算配分と思想のズレ
子ども家庭庁の予算は年間7兆円超。
児童手当・保育所運営費・育休給付などが中心だが、支援は“生まれた後”に偏っている。
- 「生む前段階」──婚姻数・経済的安定・住環境などへの投資が不足
- 「子どもを育てられると思える社会設計」が欠落
- 結果として、第一子すら生まれない構造が放置されている
制度が育児支援に偏ることで、出生数の入口設計が空白になっている。
④ 本質的な少子化対策は“生まれる前”にある
出生数を押し上げるには、婚姻数の増加と第一子出生率の改善が不可欠。
そのためには、以下のような前段階の制度設計が必要になる:
- 結婚・出産が合理的選択になる税制設計(例:子ども控除の強化)
- 教育費・住宅費の構造的軽減
- 育児休業の男女完全取得+復職保証
- 「生んだ方が得」と思える環境の構築
これらが揃って初めて、
「一人しか生まない家庭が二人に」「未婚者が結婚して一人を生む」流れが生まれる。
🧭 結論:制度は“思想で設計”しなければ未来を守れない
少子化対策は、予算の多寡ではなく、思想の設計図があるかどうかで決まる。
「子どもは社会の資産である」という思想に立つなら、
税制・保険料・給付制度すべてを再設計する必要がある。
そしてその設計は、
生活者の納得感と未来への出口戦略を同時に描くものでなければならない。
独身税と子ども家庭庁は、いままさにその思想設計が問われている。